2010/11/15 債券の発行形態 No.5-デュアル・カレンシー債-
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■ メルマガ『債券』編
-債券の発行形態 No.5-デュアル・カレンシー債-
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このメルマガは、『株式』編、『投資信託』編と続き、第3弾として、『債券』
編となっています。
これまでは、国債・社債・外債など、発行主体や日本内外の債券という識別で
説明してきましたが、債券の発行形態には、他にも見ておく必要があるものが
あります。それは、固定利率、変動利率、ゼロ利率などの発行条件にかかわる
もの、その他にも債券ではあるが、それでも説明が必要な、デュアル・カレン
シー債、日経平均連動債、新株引受権付転換社債、優先出資証券など、舌が回
らないような名称の債券があるのです!
ある意味では、これらは、証券会社の金儲けの種になっている面、顧客に対す
る目くらましになっている面、儲けをたっぷり取るためにコストをわかりにく
くしている面、売りやすく顧客に有利に見える面(実際は危ない)、あとあと
売る時にも証券会社に儲けがたっぷり入る面など、皆さんにとっては気をつけ
なければならないばかりの話が出てきます。
これを信じるか、信じないかは皆さんの自由ですが、ここで申し上げておくこ
とがあります。私、尾藤 峰男は証券会社に21年間いて証券会社がどういう振
る舞いをするかを熟知し、債券を個人に売る個人営業、債券発行を海外政府や
メガバンクを含む発行体に働きかける推進部門、債券発行を準備・手続きする
債券引受部門、海外現地法人トップとして債券売買を実際に行った経験があり
ます。さらに、金融業界・法曹界・会計士業界など誰もが認める世界最高峰の
資産運用・証券分析知識をもつとされるグローバルスタンダード資格、米国
CFA証券アナリスト資格を有しているということです。
日本の金融機関は、世界の金融機関に完全に後塵を拝していますが、その意味
では私、尾藤は、まったくの手間味噌ですが、個人の資産運用の面で、世界の
先陣を走っていると自負しております。そして、皆さんのために、証券会社や
銀行からの防護壁になるということを忘れないで下さいね。そのためのコスト
(私どもの投資助言料)は、銀行や証券会社に損させられるであろうと見込ま
れる額(人生を壊すほど巨額になることもある)や自分だけでやっているより
正しくやっていればもっと得られるであろう投資パフォーマンスに比べれば、
保険程度に安いものということです。
さて、そこで今回は、デュアル・カレンシー債です。証券会社や銀行は、よく
もまぁー、次から次へと舌を噛みそうな債券を出してくるものだとあきれてし
まいます。もう少し品良く商売してほしいものですね。舌を噛みそうな債券-
それは、お客様を目くらましにする商品とでも覚えておいて、結論を先に言え
ば、もうそれだけで遠ざかるべき商品としておけば、だまされずに済みますし、
時間の無駄にもなりません。
たとえば、こういう債券があります。
北欧地方政府保証機構保証付 北欧地方金融公社 2013年○○月○○日満
期 期限前償還条項・円償還条項付 円/豪ドル デュアル・カレンシー債
ずいぶん長いですね。さらに皆さん、このタイトルでどういう債券か、わかり
ますか。わからないはずです。この中味には、専門家が考えてもよくわからな
い、あるいは解明できにくい仕組みが、たくさん隠されています。実を言いま
すと、説明している証券会社や銀行の営業担当者もよくわからないまま、お客
様に勧めているのです。
それでは、このデュアル・カレンシー債の仕組みを探ってみましょう。
□ デュアル・カレンシー債は、表向き高金利の目くらまし商品
デュアル・カレンシー(二つの通貨)債とは、利息が円ですが、満期償還の場
合、円または外国通貨で償還されるものです。
次のようなデュアル・カレンシー債を取り上げて、その仕組みを説明しましょ
う。
デュアル・カレンシー債の例
北欧地方政府保証機構保証付 北欧地方金融公社 2013年○○月○○日満
期 期限前償還条項・円償還条項付 円/豪ドル デュアル・カレンシー債
発行会社 北欧政府公社(AAA格付)
円利率 4%(税引き後3.2%)
期間 3年
ここまで見るとすごく魅力的ですが、このあとさまざまな条件がつきます。
● 償還時の為替レートが一定の為替レート(たとえば当初の為替レート
-15円/豪ドル)より円高・豪ドル安の場合、当初の為替レートでの豪ドル
換算額で償還され、この一定の為替レートより円安・ドル高の場合、円での元
本100%で償還されます。
● さらに発行会社の選択により、円で期限前償還(最短6ヶ月)される
場合があります。
このあたりに来ますと、もうわからなくなってきます。そこが、落とし穴であ
り、証券会社や銀行にとっては、目くらましということを、肝に銘じておく必
要があります。そして、それは、皆さんが無知ということではなく、専門家が
見ても、いいものかどうか判断しがたいものなのです。そして、いえることは、
こういう商品は、必ず発行会社や売る証券会社や銀行が勝つようになっていて、
皆さんは負けるようにできているということです。それがこれだけみても判断
できないのですから、怖い商品です。あるいは、判断できないようにしている
といってもよいでしょう。少し先走りますが、この債券を売ることにより、い
くらの収入が銀行や証券会社に入るのか、聞いてみてもよいでしょう。その聞
き方は、後でお知らせします。
□ 高金利に見せながら、組成側は上前を大きく抜いている
それでは、上に取り上げましたデュアル・カレンシー債の仕組みについてお話
します。なお、これ以外にもさまざまなデュアル・カレンシー債が出ています
が、基本的な仕組みは同じです。
まず、年利率4%の円での高金利はどこから来るのでしょう。この原資は、償
還時の3年後に一定の為替レート(当初の為替レート-15円/豪ドル)より
円高・豪ドル安になると儲かるプット・オプションを売ることにより(売ると
いうことは、その逆の円安・豪ドル高を見込んでいる)得ています。このオプ
ション・プレミアム分が、3年であれば日本国債でも0.2%程度の金利に上
乗せされて、4%もの高金利が出てくるわけです。
ところで、この仕組みをつくる証券会社や銀行は、プット・オプションを売っ
たことにより得られるプレミアムを、全部円金利に上乗せするわけではありま
せん。ここに彼らの収入源がでてきます。プレミアムの一部を「抜く」わけで
す。この額が、驚くほど高いものになる可能性があります。しかし、それは、
皆さんにはわかりません。
ここで、このプレミアムの額を調整するものは、償還時の一定の為替レート
(当初の為替レート-○○円/豪ドル)の○○円の部分です。この額が小さけ
れば小さいほど、プレミアムの額は大きくなります)
そこで、先ほどの証券会社や銀行の収入源の話ですが、多少意地悪になります
が、このプット・オプション売りのプレミアムのいくらを銀行や証券会社は取
っているのかを、聞いてみるのです。おそらく4~5%程度抜いているのでは
ないかと、当方では見ています。さらに、為替手数料50銭程度も入ってきま
す。営業担当者は、ちんぷんかんぷんの答えになるでしょう。そこで引き下が
る可能性大です。しつこく、組成部署にきいてくれと頼んでみるのも一法です。
そういうことをしますと、もう二度とこういう商品を勧めないでしょう。
□ 発行会社・販売側がいつも勝ち、購入側がいつも負ける商品
さて、高金利はどこから来るかを説明しましたが、そのあと、皆さんにとって
油断もすきもないことが続きます。上の償還時に一定の為替レートより円高、
豪ドル安になっていると、当初為替レートでの豪ドル償還となり、少なくとも
引かれた15円分は為替損になります。元本換算では、-18.5%、1年で
5円/期中平均為替レート72円とすると-6.9%で、高金利分は帳消しで
それを上回る損となります。
また、この種の債券はさまざまな条件が付いていて(購入側はよくわからない
目くらまし状態)、発行会社や販売側が儲かる仕組みになっています。たとえ
ば、円安・豪ドル高となり、しばらくは高金利がもらえるだろうとほっとして
いると、発行会社の選択で、円100%で強制償還される条項があります。皆
さんはこれをありがたいと思ってはいけません。円での高金利は見せ金利とい
えないこともないのです。一方、購入側は中途売却ができなかったり、元本の
対し10%もの大幅なペナルティをとられたりします。発行会社側はいつでも
償還でき、購入側は売却できないとは、不平等もはなはだしい。要は、発行会
社や証券会社・銀行は、ローリスク・ハイリターン、購入側は、その裏返しで
ハイリスク・ローリターンの商品なのです。
すこし、専門的なことを付け加えますと、この債券をつくるため、プットの売
りに対抗して、組成側はプット・オプションを買います。また、このプット・
オプションの買いをヘッジするため、コール・オプションを買います。こうし
ますと、お客様が償還時の一定レートより円高・豪ドル安になり為替損が発生
すると、組成側は儲かることになります。また、豪ドルが高くなり円が安くな
っても利益が出るポジションをコール・オプションの買いによって確保してお
り、ほとんどのケースで彼らに利益が出るように仕組んでいるわけです。
□ 証券会社のセールスにだまされてはいけない
ここで、皆さんがもっとも陥りやすい点を、あらためてお知らせしておきまし
ょう。それは、営業セールスのセールス文句です。「この債券は、4%の高金
利がもらえる債券です。しかも発行会社はAAAと最高格付けですから、安心で
す。償還のときに、ここまで円高にならなければ、100%円で償還されます。
いま大変な円高ですから、ここからさらに円高が進むとは考えにくいでしょう。
国債や預金は、ほとんど利息がつきませんから、こういう商品にしておくと、
お得ですよ!」こう単純化して、いいことばかりをいって、肝心なところはい
わない、あるいは本人がわかっていないという状態。
ここで、皆さんが購入に動く気持ちを読んでみましょう。「そうだよなー、
4%は魅力だなー。AAAで返ってこないということはまずないし、円高も、満
期の時そこまでは進まないだろう。すこし買っておくか。」こうして買う人が
いかに多いことでしょう。
大切なことは、購入する時は、仕組みがどうなっているかを知ることが必要で
す。そして、どの程度のオプションの売りの金額が金利に上乗せされているか、
いくら証券会社や銀行が上前をはねているか、を明らかにすることです。皆さ
んにそれができますか?おそらく、教えてくれないでしょう。そもそも、そこ
までして購入を検討する個人の方は、いないのです。上のような気持ちで購入
する人がすべてです。こうして、必ず負ける商品を購入することになり、いく
ら頑張っても皆さんの資産は増えないということになってしまうのです。
いかがでしたか?デュアル・カレンシー債。こういう舌を噛むような名前の商
品を買うのは、やめておきましょう。そもそも理解できないようにできていて
目くらまし商品を地で行くようなものなのです。投信販売の金融庁の指導が厳
しくなり、こういう債券販売に重点を置いてきたという話も聞きます。くれぐ
れも、気をつけましょう!
さて、次回は優先出資証券です。これも、皆さんがリスクをわかって購入して
いるか、はなはだ、疑問です。高い金利に引かれてリスクを見落としてはいな
いか、来週もじっくりと、そのあたりを解明していきましょう。
では、次回をお楽しみに!!
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くださいね。
それでは、また来週お会いしましょう。皆さんの一週間が、すばらしい一週間
になりますように!
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編集後記:
第2回『人生を安心して生きるための金融資産運用セミナー』のご案内です!
第1回『人生を安心して生きるための金融資産運用セミナー』は、大変好評の
うちに終わりました。セミナー途中でも活発な質問があり、大変なごやかな雰
囲気のなか、2時間があっという間に過ぎてしまいました。アンケートも、
「わかりやすかった。資産運用の必要がわかってよかった。これからは海外に
も投資したい。」等々、今後もセミナーに参加したいという方ばかりでした。
そこで第2回『人生を安心して生きるための金融資産運用セミナー』を11月
27日(土)に、冒頭にご案内しておりますとおり開催することにいたしました。
厳しい時代の資産運用の環境のなかで、きっと得られるものがあることでしょう。
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