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2023/04/10 日銀、黒田総裁の功罪というより「罪」

2023/04/10 日銀、黒田総裁の功罪というより「罪」

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-日銀、黒田総裁の功罪というより「罪」-

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-日銀、黒田総裁の功罪というより「罪」-

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2期、10年を務めた日銀、黒田総裁がついに退任となりました。というか、やっと辞めてくれたかというのが実感です。この10年間の金融政策は、ごり押しの連続。最初は、「黒田バズーカ」と言われ、はなばなしいデビューを飾ったのですが、だんだんとその効果を発揮できず、最後は、野となれ山となれ、あとは、次の人がやってくださいで、終わりとなりました。なにか、シラーっとした感で、どこにはけ口を持っていくか、徒労感を抱きます。さて、黒田前総裁の功罪というより、罪しかないと思うのですが、その数々を上げてみましょう。

□ 「2年で2%の物価上昇を達成」という幻想を抱かせた

本当に、これができるの?と内心感じた人も多かったでしょうが、日銀総裁がいうのだから、とりあえずは期待してみようと思う人も多かったでしょう。株は上がり、いまでも思い出すのは、証券会社の人が「新総裁の発言で、株が大きく上がっています!」と興奮気味に電話してきたことです。ところが、物価は上がらず仕舞いとなりました。この「淡い期待を抱かせた」こと、とんだ勘違いは、一つ、日銀の大きな罪です。まずは時間を無駄にしたこと、真の手立てを打たなかったこと(構造改革はほぼ止まり、債務縮減ではなく、増え続けた)の機会損失です。

□ よくもやってくれたり、国の借金の5割を日銀が抱えた

日銀の無制限買い入れで、国の借金(国債の残高)1066兆円の5割超を日銀が抱える状況となりました。いくらでも日銀が市場から国債を買い、金利上昇を抑える強引な策に出たのです。これにより、市場機能はマヒ。債券のトレーディング部門は閑古鳥が鳴いていたそうです。一方で、外人はいびつな金利構成に、売りを浴びせ、将来の金利上昇に賭けました。そうこうしている間に、貴重な時間は経過。市場のゆがみは、依然として解消されていません。この間、政治家の財政モラルは落ち、国防費まで借金で賄えばいいという安易な声まで出る始末です。国を守るのに、借金で。こんな国、どこにあるでしょう。そして、構造改革はどこかに行ってしまいました。いわゆる「モラルハザード」(規律の緩み)が、日本にまん延した下地を日銀が作ったということです。最近目立ってきた世界での日本の地位、存在感の低下も、そのあたりから説明できます。

□ 日銀が買った日本株ETFは50兆円を超えた

「あー、あー、いくらでも買える日銀が、50兆円も買っちゃったよ。株を知らない人が、中央銀行のトップになるほど怖いことはないなー」というのが実感です。黒田総裁は、中央銀行の日銀が株を買うということが、前向きなインパクトをもたらすと思ったのでしょうか。そもそも株を買うのは、上がると思うから買うのですが、日銀が買えば株は上がると思うのが、お門違い。いわば、救いの手を差し伸べる「天の神」的発想です。株のことを知らない役人(黒田総裁は財務省の財務官だった)の発想といってもよいでしょう。軒並み、実質筆頭株主となった日銀は、会社の議決権行使になんら動いていません。ETF(上場投資信託)ですから、信託銀行が議決権行使をするのですが、50兆円も持つと、その存在感は大きい。にもかかわらず、ETFなので信託銀行任せで、日銀は何も言わず。この空洞は、株主監視による企業統治という面で、非常に大きな負の遺産となったといってよいでしょう。

しかも、持っているだけで、貸金庫代のように、お金がかかっているのです。それは、ETFの信託報酬。今では年間500億円超の信託報酬を払っているそうです。これまでの累計は3000億円超。実は、このコストは、日銀が直に市場で株を買っていれば、払わなくていいコストです。そして、現物買い、あるいはETFを現物化すれば簡単にできることなのです。ETFを持ち続ければ、ずっと払い続けるコスト。「日銀はいくらでも金を刷れるからいいんだ」ではないのです。全くバカなことをしたものです。このままETFを持ち続ければ、あと10年もすれば、1兆円を超える信託報酬を払うことになります。これは国民負担なのです。

「あんた、このETF、どうするのよ」と言いたくなりますが、黒田前総裁は、「いまその議論は時期尚早」とのこと。自分は終わりなので、後の人が面倒見てくださいということです。そもそも始めるときに、終わりはどうするかを定めておくべきなのです。

□ 妙に、批判のトーンが少ないメディア、政治の世界

黒田前総裁に対する評価で、どうもメディアは、中央銀行に対する慮りというものを感じます。黒田前総裁への批判のトーンが弱いということです。直接的な批判は見たことがありません。今後の日銀との関係を慮って、遠慮しているのでしょうか。政治も、いくらでも国債を買ってくれていたので、いい金づるという面があり、同じ穴のムジナという立場なのでしょうか。もっと、黒田総裁時の負の面を洗い出して、改めるべきを改める姿勢を持たないと、またこの悲劇を繰り返すことになります。妙に静かに、黒田氏から植田氏にバトンタッチが行われますが、黒田総裁時の金融政策の反省(負の遺産の洗い出し)をもとに、植田新総裁のスタートとしてもらいたいものです。最後の落ちとなりますが、黒田総裁は、退任会見で「反省はない」といっていました。

いかがでしたか、今週のメールマガジン。
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■ 編集後記:

いよいよ、新年度。仕事の面では、新たな年となるタイミングですが、今年は、コロナ禍の行動制限もほぼなくなり、街に活気も戻ってきた感があります。外人観光客もずいぶん多くなりました。こういうことが、景気には大事ですね。物価はだいぶ上がっていますが、物価というものは、時間が経つと慣れてきます。賃金も、今年は、横並びで上がっている感があります。こちらは日本人特有の「他がやればうちも」の感覚。いい面と捉えて、明るい気分で進んでいきたいものです。

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メールマガジン発行者プロフィール:

尾藤峰男 公認投資助言者(RIA)
びとうファイナンシャルサービス株式会社 代表取締役

「米国CFA協会認定証券アナリスト」「CFP」「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」「1級FP技能士」の4つの最高難度の資格を持つ。

金融機関と全く関係がない資産運用アドバイザーとして、投資助言料のみで個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニングサービスを提供する。グローバルな投資理論や外国株投資・国際分散投資に精通。日本経済新聞、週刊東洋経済、週刊エコノミスト、ダイヤモンドなどへ寄稿・コメント多数。日経CNBC、テレビ東京などにも登場。著書に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」「バフェットの非常識な株主総会」。

2000年びとうファイナンシャルサービス株式会社設立。
投資助言・代理業登録-関東財務局(金商)第905号
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■発行責任者 尾藤 峰男(びとう みねお)公認投資助言者(RIA) 
       米国CFA協会認定証券アナリスト
       日本証券アナリスト協会検定会員
       1級ファイナンシャルプランニング技能士
       日本FP協会CFP認定者

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