2012/03/05 人口減少・高齢化がわが国経済や株式市場に与える驚愕の結果
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-人口減少・高齢化がわが国経済や株式市場に与える驚愕の結果-
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□ 2060年のわが国人口は3分の1減少し、高齢者は10人に4人に
国立社会保障・人口問題研究所が、2060年までの日本の将来推計人口を発表し
ました。
わが国の人口は長期に減少し、2010年の1億2806万人から、2030年に1億1662万
人となり、2048年には1億人を割って9913万人に、2060年には8674万人になると
推定しています。(出生・死亡中位推計)2060年までの50年間で、人口は4132
万人の減少、実に2010年人口の32.3%の減少が見込まれるのです。
これを各年齢層の内訳で見ると、年少人口(0-14歳人口)は2010年の1684万人
から791万人へ893万人も減り(2010年の-53%)、生産年齢人口(15-64歳人口)
は8173万人から4418万人へ3755万人(同-45.9%)の減少が見込まれます。これ
に対し、老年人口(65歳以上人口)は2948万人から3464万人へ、516万人
(同+17.5%)も増えるのです!これは、まさに、世界にかつてない急速な高齢
化です。
この期間に、年少人口割合は2010年の13.1%から9.1%へ4%減少、生産年齢人
口割合は63.8%から50.9%へ12.9%もの減少が見込まれます。これに対し、老
年人口割合は23.0%から一貫して上昇し、2060年には39.9%へ16.9%も増加し
ます。実に、国民の10人に4人は、高齢者という状況になります。
合計特殊出生率は、2010年1.39から2024年1.33を経て、長期的には1.35に収束
するとしています。平均寿命は、2010年男性79.64歳、女性86.39歳から伸長し、
2060年には男性84.19歳、女性は90.93歳に到達し、いよいよ90歳が当たり前と
いうことになるのです。
年間死亡者数のピークは、団塊世代の多くが死期を迎える2040年の167万人、こ
の年の出生数は67万人にとどまり、実に和歌山県が毎年1つずつ消滅するほどの
規模の人口減少が続いていくというのです。
□ 人口動態ほど先行きを読める指標はない(ピーター・ドラッカー)
将来推計人口は経済予測と異なり、確実性がはるかに高いのです。平均余命や生
存率の予測は大きくはずれません。そのため、将来人口を左右するのは出生動向
となりますが、これも大幅には変わりません。移民受け入れの拡充がない限り、
総人口は推計に沿って動く可能性が高いのです。いわば、人口動態は必然的にそ
うなると考えるべきなのです。
そして、GDP成長は以下の等式からなっていて、生産年齢層の増加が重要な要素
になっています。
GDP成長
=0.75×生産年齢層の増加+0.25×資本投入の増加+労働生産性の増加
*0.75,0.25の比率は、先進国経済での平均的シェア
また、労働生産性は単独で成立するとは限らず、生産年齢層、特に20~30歳代
の若い年齢層が増えないと、生産性が上がらないという点も忘れてはいけませ
ん。単に技術やテクノロジーが進歩すれば、生産性が上がるということではな
いのです。
このように生産年齢層の増加GDP成長の重要な要素なのですが、今回の日本の将
来人口推計では、生産年齢人口は、2060年には、2010年から45.9%減るというの
ですから、わが国の先行きを暗いものにしています。
□ 将来人口が、株式市場にどう影響するか?
米国の主要な投資理論誌ファイナンシャル・アナリスト・ジャーナル(2012年
1・2月号)に、興味深い論文「人口動態、金融市場、そして経済」(Robert
Arnott)が発表されました。
この論文は、2011年から2020年の間の実質1人当たりGDP成長率、株式リターン、
債券リターンが、人口動態により、どう影響するかを統計解析で分析したもの
です。統計データには、世界200カ国以上の過去60年間の人口動態、GDP、株式
リターン、債券リターンを使い、大変広範に分析しています。著者によれば、
このような人口動態とGDP、金融市場リターンとの関係をシステマティックに予
測した最初のケースとしています。
これによりますと、人口動態との関係で、以下のことが読み取れるとのことです。
・1人あたりのGDP成長は、若年層が多くを占めていて、その層が急速に拡大して
いる国で高い。
・5-19歳の層の比率が大きいと、歴史的に、株式リターンは低い。
・老年層の比率が大きいと、金融市場のパフォーマンス(株式、債券とも)は
悪い。
・年少層(0-14歳)は、当然ながら、GDP成長、債券・株式リターンに寄与し
ない。
・若い世代はGDP成長のエンジンで、彼らはイノベーションや企業家精神の源泉
である。ただ、まだ投資はしておらず、過剰支出する傾向がある。
・中年層は金融市場のけん引役で、彼らは収入、貯蓄や投資の只中にいる。
・老年層はGDP成長、金融市場のリターンのいずれにも貢献しない。彼らは、彼
らが生み出さない商品やサービスの購入のため、資産を取り崩す世代である。
ここで、以下にあげる実質1人当たりGDP成長率、株式・債券リターンの予測数
値は、各々の国の長期リターン平均値からの乖離幅(%表示)としています。
成長率やリターンの絶対値ではないことに留意しましょう。また、ここでの分析
結果は、5歳ごとの年齢層のシェア比率を元にしていることを記しておきます。
その結果、人口動態から、2011年から2020年の実質1人当たりGDP成長率、株式・
債券リターンについて、以下のことが読み取れるとしています。
・先進国の人口動態はGDP成長をマイナスに、債券の平均リターンをプラスに動
かす。(老年層が増え、生産が減り、貯蓄が増えるため)先進国の株式リターン
はまちまち。
・高齢化が進展する世界は、貯蓄する中年層が厚く、債券リターンが高くなると
見られる。
・アイルランド、ポルトガル、スペインやギリシャが、他の先進国に比べ、株式、
債券リターンとも高いと予想されることは、最近のこれらの国の状況を見ると興
味深い。
・先進国の中でも、比較的若い国は、債券でリターンが高いことが予想できる。
・ラテンアメリカやアジアは、ほぼプラスのリターンと見込まれる。
・BRICS諸国は、少なくとも今後10年は、人口動態の面から明るい状況が期待で
きる。
□ 日本の経済、株式リターンに、人口動態が及ぼす驚愕の結果
さて、いよいよ、この論文の日本についての分析結果を紹介しましょう。
2011年から2020年の日本の実質1人当たりGDP成長率、株式リターン、債券リタ
ーン(いずれも年率)が、人口動態により、どう影響するかを統計解析で分析
したところによりますと、以下のとおりになります。
なお、再度お伝えしますが、実質1人当たりGDP成長率、株式・債券リターンの
予測数値は、日本の長期平均値からの乖離幅(%表示)です。成長率やリター
ンの絶対値ではないことに留意してください。
・ GDP成長率 年率 -5.2%
・ 株式リターン 年率 -9.6%
・ 債券リターン 年率 +1.8%
この結果について、論文は、非常に低い出生率と退職者の爆発的増加が、人口
動態上の強い向かい風になるとしています。GDP成長率と株式リターンは、他の
先進国に比べ、ダントツに大きなマイナスになっています。この予測数値は統
計的手法での解析結果であり、そのまま実際の指標に現れるとは信じたくあり
ませんが、日本の人口動態が株式市場や日本の経済に及ぼす影響は、今後顕著
に現れてくることを強く示唆しています。2011年~2020年の間、毎年これだけ
の幅でリターンの足を引っ張るとなれば、尋常ではありません。
長期的に、なんとしても、実質的に人口を増やす政策をあらゆる面から導入し
ていく必要があります。ただ、2020年までの即効薬としての対策としては、人
口動態の面では打つ手なしというのが厳しい現実といわざるを得ません。
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■ 編集後記:
AIJ投資顧問の巨額運用資金の消失事件は、多方面に衝撃を与えています。多く
の関与者がいるなかで、加入者の大切なお金がこれだけおろそかに扱われてい
たことに、驚きとともに、日本の社会システムの深刻な欠陥を感じざるを得ま
せん。
この事件を、決して特殊な事件として応急措置的に終わりにするのではなく、
事件の徹底的な解明と抜本的な再発防止策を打つべきです。その中には、金融
庁の監督・指導体制、信託銀行の役割・責任の明確化、タックスへブンの私募
投信の妥当性、年金基金の運用執行体制の改革などが含まれます。社会保険庁
OBが年金基金側にもセールス側にも絡んでいたということは、やはりという感
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